たまの宝箱

たまたまの出会いを宝に変えてきた「たま」が、自分の好きをご紹介

【本】はてしない物語

 ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』という本が、子供の頃私の親友でした。


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主人公の少年が同級生の男の子たちにいじめられて逃げ込んだ古本屋で珍しい本を見つける。それは二匹の蛇がお互いの尾をくわえた楕円になっている模様の表紙。

 

そして赤茶色と緑色の2色で印刷してある文章。現実が赤茶色、物語の世界が緑色。学校の物置小屋で読んでいる主人公の男の子は、だんだん物語の世界に引き込まれていき、ファルコンという白い龍の背中に乗って冒険に旅立ちます。


 読書好き、空想好きという自分の歳の近い主人公。休み時間には校庭でみんなと元気にドッチボールなどで遊ぶのがいい子。そんな担任の先生から隠れるように、図書室の隅っこで隠れるように本の世界に没頭していた自分。

 

主人公が物置小屋で読んでいる、蛇の模様が描かれた深いえんじ色の布の表紙、2色刷りの文章は、まさしく私が読んでいる本そのものだったのです。


 「悲しみの沼」と言う底なし沼に白い馬がズブズブと沈んでいく情景。悲しみを心に抱けば行くほど暗い沼にずぶずぶと引きずり込まれていく白い馬。大きな黒い目が悲しげに主人公の男の子を見上げます。

 

脚が沈み込み、胴体が飲み込まれ、白くて長いたてがみの首がどんどん見えなくなっていきます。嘶くこともできずに、最後は黒いまん丸の潤んだ両眼までも…。


 翼を持ったライオンのような巨大な彫刻が両脇にある門を、その門番たちに気づかれずに通り抜けなければいけない少年。気配を察知されてしまうと、巨大な門番の左右の両眼からビームが発射され、焼き殺されてしまいます。

 

走り抜ける、気づかれる、門番が目を開ける、スピードを上げ駆け抜ける、発射される。そのハラハラした情景。

 

 自然豊かな北海道から、小5の3学期に関東に引っ越し。都会の女子たちのオシャレさ、子供ながらに感じる洗練された服や髪型に圧倒されました。高学年女子の3学期なので、もうグループもできあがっています。

 

北海道では、標準語で教科書を朗読できる、と授業で指名されることも多くて楽しかった学校生活も、いきなりみそっかすの私。スピードスケートなどのウインタースポーツは体育で得意になりましたが、ドッチボールや大縄跳びなどの球技や校庭で遊ぶ集団スポーツは、冬の長い私の地域では盛んではありませんでした。

 

 周囲の女子たちに感じる引け目、馴染めなさ。でもそれを3人兄弟の長女の私は、親にも弟妹たちにも言えず、本の世界に没頭していきました。ハードケースに入って、えんじ色の光沢のある布製の表紙のずっしりとした重みのあるこの本。私が「言葉の魔法」に魅せられていくきっかけとなった大切な本です。